失語症とは?
失語症は、大脳の言語に関わる領域(主に左半球)に損傷が起きたことによって、獲得された言語能力が障害される状態です。これには、「話す・聞く・読む・書く」すべての機能が関与し、単に「うまく話せない」というだけではなく、言葉の理解や表現全体に困難が生じます¹。
脳の中でも特に、左脳の「ブローカ野」や「ウェルニッケ野」といった言語に関係する領域の損傷が失語症の主な原因です2。
主な症状
失語症の症状は多岐にわたります。以下は代表的なものです:
- 言葉が出にくい(語想起障害)
- 相手の言葉が理解しづらい(聴覚的理解障害)
- 文章が読めない・書けない(失読・失書)
- 言い間違い(錯語)
これらは、脳の損傷部位により「ブローカ失語」「ウェルニッケ失語」などのタイプに分けられ、それぞれ症状の現れ方が異なります3。
原因は?
失語症の最も一般的な原因は**脳卒中(脳梗塞や脳出血)**です。脳卒中によって言語中枢がある左脳の血流が遮断されると、言語機能に障害が出ます4。
その他にも、以下の原因で失語症が起こることがあります。
- 頭部外傷
- 脳腫瘍
- 脳炎などの感染症
- 加齢に伴う神経変性(例:進行性失語症)
日本では高齢化に伴い、失語症を発症する人も増えています5。
診断と評価
失語症の診断には、医師による画像検査(MRIやCT)と、言語聴覚士による言語機能の評価が行われます。
言語聴覚士は、「話す」「聞く」「読む」「書く」のそれぞれの能力を詳細に検査し、失語症のタイプと重症度を明らかにします。これにより、効果的なリハビリ計画を立てることができます6。
治療とリハビリ
失語症の回復には、言語聴覚士によるリハビリテーションが欠かせません。特に、発症から早い時期に始めるほど効果が高いことが知られています。
主な訓練内容:
- 語想起訓練:言葉を思い出す練習
- 会話練習:ロールプレイや日常会話の復習
- 読み書き訓練:文字や文章の読み書き能力の回復
- 代替手段の指導:ジェスチャーや図を使った補助的コミュニケーション
訪問リハビリのメリットと課題
現在、失語症の多くの方が利用しているのが、**訪問リハビリ(訪問看護ステーションなどを通じたリハビリ)**です。ご自宅でリハビリを受けられる点は大きなメリットです。
訪問リハビリのメリット:
- 自宅で安心して受けられる
- 医療保険や介護保険が適用される
しかし、一方で以下のような課題も指摘されています。
訪問リハビリの課題:
- 回数に制限がある(例:週1〜2回が限度)7
- 時間が短い(通常は20〜40分程度)
- 担当者により質に差がある場合がある
- 集中的な訓練が困難
特に、脳卒中直後の可塑性(回復の可能性)が高い時期に、十分な訓練ができないのは、大きなハンディになり得ます。
自費リハビリという選択肢
こうした課題を補う方法のひとつが、自費リハビリです。保険の制限がないため、回数・時間・内容の自由度が高く、個別に最適化されたプログラムを受けることができます。
自費リハビリのメリット:
- 希望に応じて集中的な訓練が可能(例:週3〜5回)
- 長時間のリハビリが受けられる(60分〜90分など)
- 専門の言語聴覚士が担当する個別指導
- 回復期〜生活期まで一貫した支援
自費リハビリは「もっと良くなりたい」「もっと話せるようになりたい」というご本人やご家族の思いに応える、自由度の高い新しい選択肢です。
まとめ
失語症は、脳の損傷によって言語能力が失われる障害ですが、早期からの継続的なリハビリにより、回復の可能性は十分にあります。
従来の訪問リハビリには、保険制度による制限という課題もあるため、「もっと訓練を受けたい」と感じたときには、自費リハビリという選択肢を検討する価値があります。
言葉を取り戻すことは、人生を取り戻すこと。
ひとりひとりに合ったリハビリで、再び笑顔で会話ができる日を目指しましょう。
脚注・参考文献
- 辰巳寛・山本正彦(2016). 「失語症候群の診断と治療」『神経治療』33巻3号, pp.362–367.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/33/3/33_362/_pdf - 国立障害者リハビリテーションセンター. 「脳損傷による障害」https://www.rehab.go.jp/brain/book/
↩
- 厚生労働省. 「標準的な失語症の分類とリハビリテーション」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187998.html
↩
- 日本脳卒中学会. 「脳卒中ガイドライン2021」https://www.jsts.gr.jp/guideline/
↩
- 総務省統計局. 「高齢社会白書(令和5年版)」https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html
↩
- 国立保健医療科学院. 「言語聴覚士による評価の基準」https://www.niph.go.jp/ ↩
- 厚生労働省. 「訪問リハビリテーションの利用実態調査報告書」https://www.mhlw.go.jp/content/000705848.pdf
↩