失語症とは?
失語症とは、脳卒中や脳外傷などの影響で、大脳の言語中枢が損傷を受け、「話す」「聞く」「読む」「書く」といった言語機能が障害される状態です¹。主な原因は**脳卒中(脳梗塞・脳出血)**で、日本では年間約3万人が失語症になると推計されています²。
失語症のある方は、自分の考えや気持ちをうまく言葉にできなかったり、他者の話を理解できないことがあります。これにより、日常生活や社会活動への参加が困難となることが多く、適切な言語リハビリが必要です。
退院後も「もっと会話練習を続けたい」「病院には通いにくいので自宅で受けたい」と感じる方が増える中で、近年注目されているのが「訪問型の言語訓練」です。
従来の訪問リハビリとは?
失語症の方が退院後に自宅で受けられるリハビリの手段として、主に以下の2つの訪問支援があります。
(1)病院からの訪問リハビリ
退院後も継続的なフォローが必要な場合、病院によっては、リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など)を自宅に派遣し、訓練を継続する体制を取っていることがあります。
メリット:
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入院中から継続して同じチームが関わるため、状態をよく理解したうえで訓練を実施できる
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医師や他職種との連携が密で、体調や合併症への対応もスムーズ
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専門病院であれば、失語症に特化したSTが在籍している可能性が高い
デメリット:
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訪問期間や回数に限りがある場合が多く、長期的な支援には向かない
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忙しい病院では、退院後の個別フォローにリソースが割けないケースもある
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地域によっては対応していない医療機関も多い
(2)訪問看護ステーションからの訪問リハビリ
主治医の指示のもと、訪問看護ステーションに所属するリハビリ専門職がご自宅に訪問し、必要に応じた訓練を行う方法です。
メリット:
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医療的ケアが必要な方にも対応でき、体調管理と並行して言語訓練が行える
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在宅医療に特化した事業所では、生活全体を支える視点で訓練が提供される
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家族や介護者への助言・指導が受けやすい
デメリット:
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ステーションによってはST(言語聴覚士)が在籍しておらず、対応不可な場合がある
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支援内容が簡易的になることがあり、会話訓練や社会復帰支援が不十分なこともある
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病院のような専門的設備がないため、訓練内容が限定されることがある
上記2つの方法はいずれも在宅での支援という点で非常に有意義ですが、「回数が限られている」「訓練の内容や質に差がある」「失語症への特化が十分でない」といった課題も報告されています。こうした背景から、より柔軟で専門性の高い支援を求めて自費の訪問型言語リハビリを検討される方が増えています。
「もっと話せるようになりたい」気持ちに応えるには
多くの方が「退院後しばらくしてからが本番」と感じています。例えば、「もう制度の利用期間が終わった」「週1回の訓練だけでは足りない」といった声も少なくありません。
現実には、以下のような問題が起こりやすくなっています:
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訪問支援の回数が限られている
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言語聴覚士が訪問可能な地域が限られている
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訓練内容が日常生活の困りごとに直結していない
これにより、「もっと頑張りたい」「もう少し話せるようになりたい」という気持ちがあっても、リハビリを継続できないケースが多くあります。
自費リハビリという選択肢
そこで近年、注目されているのが自費(保険外)での訪問型言語リハビリです。これは、制度に縛られず、希望に応じて内容や頻度を柔軟に設定できるサービスです。
自費訪問リハビリの特徴:
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自由な頻度と時間設定(例:週2回60分など)
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目標に合わせたオーダーメイドのプログラム(発話訓練・読解訓練・実生活場面での練習など)
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STが継続的に同じ利用者を担当し、質の高い支援を提供
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電話・買い物・家族との会話など、生活に即した練習が可能
また、通院の負担がないため、体力に不安がある方でも継続しやすく、訪問型の利点を最大限に活かせます。
最新の研究でも、「在宅でのSTによる言語リハビリは、対面型訓練と同等、あるいはそれ以上の効果が得られる」とされています³。
まとめ:自宅でのリハビリに「もう一つの選択肢」を
失語症の回復には時間と継続が必要です。従来の訪問リハビリにも多くの価値がありますが、その制約により十分な支援が受けられないこともあります。
**「もっと話せるようになりたい」「外でも不自由なく会話したい」**という本人の気持ちに寄り添うためには、制度にとらわれない自費リハビリという選択肢が有効です。
より自由に、そしてより深く個人の目標に対応できるリハビリを通して、あなたやご家族の「伝えたい想い」に寄り添っていきましょう。
脚注・引用文献
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日本言語聴覚士協会. 「失語症について」https://www.japanslht.or.jp/medical/knowledge/aphasia/
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厚生労働省. 「患者調査(令和2年)」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/index.html
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Woolf, C., Caute, A., Haigh, Z., Galliers, J., Wilson, S., & Clarke, M. et al. (2015). A comparison of remote therapy, face to face therapy and an attention control intervention for people with aphasia: a quasi-randomised controlled feasibility study. Clinical Rehabilitation, 30(4), 359–373.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6398324/